3 感電 ― 体を流れる見えない衝撃
概要
感電は、人体に電流が流れて電気的刺激や損傷を与える現象。直接接触と間接接触があり、交流50Hzでは10〜50mAで筋肉硬直・呼吸困難、50mA以上で心室細動の危険。防止には接地、遮断器、絶縁、安全距離が有効。
本文
真夏の午後、倉庫の扇風機を掃除していた佐藤さんは、コンセントを抜き忘れたままプラグの金属端子を手でつかんでしまいました。次の瞬間、「ビリッ」という衝撃と共に腕が硬直し、ほんの一瞬のことなのに、とても長く感じられた――これが感電です。
感電とは
感電とは、人体に電流が流れ、電気的な刺激や損傷を受ける現象です。電気は目に見えませんが、人体は水分と塩分を含んだ良導体です。手や足を通って体内に電流が流れると、その経路上の筋肉や神経が反応し、場合によっては命に関わる影響を及ぼします。
危険度の目安(交流50Hz)
- 1〜5mA:チクッとする、しびれ感
- 5〜10mA:筋肉が収縮するが、まだ自力で離せる
- 10〜50mA:筋肉硬直で離脱困難、呼吸困難
- 50mA以上:心室細動の危険が急増
- 100mA超:短時間で致死的
佐藤さんは短時間の接触で済みましたが、もし手が濡れていたり、足元が水浸しだったら、もっと深刻な結果になっていたでしょう。
直接接触と間接接触
感電は大きく二つに分類されます。
- 直接接触感電:活線部分(コンセント端子、むき出しの電線など)に直接触れる
- 間接接触感電:地絡などで金属筐体や構造物が活線化し、それに触れる
間接接触は外見では危険が分からないため、接地や漏電遮断器(ELB)が重要な役割を果たします。
感電防止のための仕組み
- 接地:筐体電位を下げ、電流を安全に大地へ逃がす
- 漏電遮断器(ELB):漏れ電流を検知すると瞬時に回路を遮断
- 絶縁:導体を絶縁物で覆い、触れられないようにする
- 安全距離の確保:高電圧部から物理的に距離を取る
特にELBは感電事故の被害を大幅に減らす「最後の砦」です。佐藤さんの倉庫も、もし長時間接触していたら、この装置が働いて彼を救っていたでしょう。
身近な感電リスク
- 濡れた手での家電操作(キッチン、浴室)
- 屋外での延長コード使用時の雨水侵入
- 古い建物でアース未接続の家電を使う
- 屋外作業での仮設配線や工具の損傷
どれも特別な現場だけでなく、日常生活の中でも感電の危険は潜んでいます。
感電は、一瞬で体の自由を奪い、時には命を奪うことさえあります。しかし、接地や遮断器、絶縁といった基本的な対策を理解し、習慣として守ることで、そのリスクは確実に減らせます。
「見えないからこそ、常に注意する」
――それが感電を防ぐための第一歩です。