11 外部ノイズと内部ノイズ ― 音もなく忍び込むかく乱者

概要
外部ノイズは設備の外から侵入する不要信号で、雷、近接機器のインバータやモーター、無線通信、送電線などが発生源。内部ノイズは機器やシステム内部から発生し、スイッチング電源、リレー接点のアーク、デジタル回路のクロック漏洩などが原因。対策は、外部ノイズには遮蔽・フィルタ・接地、内部ノイズには発生源抑制・経路最小化・ループ面積削減が有効。


本文
夜のオフィスで、開発チームの佐野さんはPCの画面をにらんでいました。
ある試作機から出力されるデータが、昼間は安定しているのに夕方になると数値が微妙に揺れます。
配線も回路も異常なし。
ふと周囲を見渡すと、隣のフロアで清掃用の大型モーターが動き始めていました。
その瞬間、測定値の揺れが大きくなります――これがノイズの仕業です。

ノイズとは

ノイズとは、本来扱うべき信号や電力以外の、不要で有害な電気的信号です。
発生源や経路によって、大きく外部ノイズ内部ノイズに分けられます。

外部ノイズ

外部ノイズは、設備のから侵入してきます。
代表的な例は以下の通りです。

  • 雷による誘導電圧や電磁パルス
  • 近くのインバータやモーターからの高周波ノイズ
  • 無線通信機器や基地局からの電磁波
  • 高圧送電線からの漏洩電界

外部ノイズは、配線や接地、さらには空間を介しても侵入します。
特に雷や大電力設備の近くでは、直接つながっていなくても影響を受けることがあります。

内部ノイズ

内部ノイズは、機器やシステムの内部で発生します。

  • スイッチング電源によるスパイクやリップル
  • リレーや接点の開閉に伴うアーク放電
  • デジタル回路のクロック信号漏洩
  • 同一電源ラインに接続された別装置の突入電流

内部ノイズは、自分自身の動作が自分に悪影響を与える「自家中毒」のようなもので、特に高速・高周波回路では深刻です。

対策の基本

外部ノイズには、侵入経路を断つことが有効です。

  • ケーブルシールドと適切な接地
  • 金属筐体による遮蔽(シールドルーム)
  • サージ保護デバイス(SPD)やノイズフィルタ
  • 信号と電源配線の分離

内部ノイズには、発生源の抑制と経路の最小化が有効です。

  • デカップリングコンデンサの配置
  • 信号線と電源線の経路分離
  • 帰還電流のループ面積を最小化
  • 接点スイッチングのタイミング制御

現場での事例

佐野さんの試作機では、外部ノイズは清掃モーターの始動時ノイズ、内部ノイズはスイッチング電源のリップルが原因でした。
ケーブルシールドの片側接地と、基板のデカップリング強化で両方を抑え、測定値は安定しました。


ノイズは目に見えず、音もなく忍び込みます。
外から来るか、中から生まれるかを切り分け、源・経路・受け手の3点で考えることが、確実な対策の第一歩です。

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