7 火災 ― 炎が見えるときはもう遅い
概要
電気火災は、過負荷、短絡(ショート)、地絡、アーク、トラッキング現象などで発生する。特徴は、電源が供給され続ける限り燃焼が続くこと。炎が見える段階ではすでに被害が拡大しており、重要なのは過熱や火花の段階で止めること。対策は、定期点検、負荷管理、清掃、防火設計、適切な保護機器の導入など。
本文
商店街の裏手にある古い倉庫で、小さなカチカチという音が聞こえていました。
誰も気に留めないまま数日が過ぎたある夜、通行人が中から立ち上る黒い煙を発見。
駆けつけた消防隊が見つけた火元は、壁際の古い配電盤でした。
原因は電気火災――その火種は、目に見えないところで長くくすぶっていたのです。
電気火災とは
電気火災は、電気設備や配線の異常によって発生する火災です。
炎が上がる前に長時間の過熱や火花が続くのが特徴で、電源が供給され続ける限り燃焼は止まりません。
典型的な発生パターン
- 過負荷
許容量を超える電流が長時間流れ、配線や機器が過熱。
古い延長コードやたこ足配線が危険。 - 短絡(ショート)
導体同士が直接接触し、一瞬で大電流が流れて火花や溶融が発生。 - 地絡からの発火
絶縁劣化や損傷で大地に電流が漏れ、接触部分が過熱・発火。 - アーク放電
接触不良や汚損部で発生する高温アークが、近くの可燃物に着火。 - トラッキング現象
コンセントや配線の表面にほこりや湿気が付着し、微弱電流で炭化導電路が形成され、沿面放電から発火。
現場の例
冒頭の倉庫火災では、配電盤の端子が長年締め直されず、振動で少しずつ緩みが生じていました。
接触不良部分で発熱が進み、絶縁物が焦げて炭化。
そこからアークが発生し、近くの配線被覆や段ボールに火が移り、一気に燃え広がりました。
火災を防ぐために
- 定期点検:端子の増し締め、絶縁抵抗測定
- 負荷管理:許容電流を超えない設計
- 清掃:ほこりやごみの蓄積防止(特にコンセントや配電盤内)
- 保護機器:過電流遮断器、漏電遮断器、アーク故障検出器(AFDD)の設置
- 防火設計:耐火材料の使用、延焼防止の区画設計
火災は、炎が見えた時点で既に被害が拡大しています。
本当に大切なのは、その前段階――過熱や火花のうちに止めること。
日常の小さな異音、焦げ臭、ブレーカーの頻繁な作動といった「違和感」を見逃さない感覚が、防火の最大の武器になります。