麻布十番秋祭り 六町会と宮神輿が紡ぐ伝統の力
2025年9月14日、東京・港区麻布十番の街は、威勢の良い掛け声と太鼓の音に包まれました。地域の人々にとって秋の風物詩である麻布十番秋祭りが、今年も盛大に開催されました。
六町会が一堂に会す連合神輿
麻布十番秋祭りの最大の特徴は、六つの町会がそれぞれの神輿を担ぎ、連合渡御として商店街を巡行する点にあります。参加するのは、麻布宮村町会、坂下会、新二会、網代会、麻布十番睦会、そして山元町会。
それぞれの神輿は町の誇りを背負い、揃って街を練り歩く姿は圧巻です。掛け声に合わせて肩を揺らす担ぎ手の姿は迫力があり、沿道に集まった人々からは大きな拍手と歓声が送られました。
三年に一度の宮神輿渡御
この祭りをさらに特別なものにするのが、十番稲荷神社の宮神輿です。重厚な造りと緻密な彫刻で彩られた宮神輿は、三年に一度だけ街へと繰り出されます。
前回の渡御は2023年、次回は2026年に予定されています。宮神輿が登場する年は、普段の町会神輿に加えて荘厳な雰囲気が加わり、街全体が大きな熱気に包まれることになります。
町会ごとの特色と担ぎ手の姿
六町会の神輿には、それぞれの町の歴史や特色が反映されています。
神輿を担ぐ若者からベテランまで、世代を超えた人々が一緒になり、地域の誇りを体現していました。
商店街の賑わいと交流の場
お囃子や太鼓の演奏、子ども神輿の巡行もあり、街全体が世代を超えた交流の場となりました。普段は行き交うだけの商店街が、この日ばかりは地域を結びつける舞台に変わります。
神輿と神社に宿る文化史
十番稲荷神社は、地域の守り神として人々に親しまれてきました。戦後の時代に複数の神社が合祀されて成立し、現在も麻布十番の中心的存在です。
また、神輿は単なる祭具ではなく、日本の伝統工芸の粋が込められた「動く社殿」です。木地師や彫り師、錺金具職人、塗師といった専門の職人が分業し、千を超える部品を組み上げて完成します。鳳凰の装飾や大破風の屋根など、神輿一基に宿る造形美は、沿道でじっくり眺めたい見どころです。
探究の視点:未来へと続く伝統
麻布十番秋祭りは、戦後の混乱期や都市の変化の中で一時衰退しましたが、町会や商店街の努力により復活しました。現在は、地域住民だけでなく観光客も多く訪れる祭りとなり、地域の誇りと絆を確認する場として続いています。
子ども神輿や若手担ぎ手の参加は、単なる行事参加にとどまらず、伝統を体験を通じて次世代へ受け継ぐ営みです。六町会と十番稲荷神社が中心となり、この文化はこれからも守り育まれていくことでしょう。
結びに
麻布十番秋祭りは、地域の人々にとって「一年を象徴する日」です。六町会の神輿が肩を並べ、商店街が活気にあふれ、神社が祈りを込める。この循環があるからこそ、来年もまた担ぎ手や見物客が自然に集まります。
都市の変化に抗いながら、伝統を未来へと受け渡す。麻布十番秋祭りは、その実例として今も息づいているのです。